《No.13》
家族だけで


平成15年6月号

《MEMO》

最新の3高は、高年齢・高血圧・高脂血症なのだそうです。
これなら、心掛け次第であなたも3高よ。
私が学生の頃、3高という言葉が流行った。オトコを選ぶ時、高学歴・高収入・高身長の3つの条件が揃っている人が当時は理想とされていた。近頃聞かないなと思っていたら、「高身長」が敬遠されるようになったのだそうだ。介護が必要になった時、大きい人は困るんだって。

ふむふむ、その気持ち、よく分かる。私の夫は、はっきり言って「大男」。縦にもデカイが、最近は横にも貫禄が‥‥。あんな粗食で何故?などとのんびり構えてはいられない。このままでは、マズイ。もし、万一倒れられたら、私一人の力では、もう絶対に動かせない。ああ、どうしよう。彼は彼で、私の横腹を眺めながら同じようなことを考えているに違いない。

あれれ?ちょっと待てよ。家族が具合悪くなったとき、私ったら、自分たちで解決しなければ面倒を見なければと、頭の中でアレコレ画策している。仮にも元ケアマネじゃないか、私。家族だけで本当に大丈夫?

Kさんは、椅子に腰掛け終日外を眺めていた。足の筋肉が徐々に弱り、広い屋敷の中の移動は大変で、入浴介助には特に手間取った。今はシャワーで半身浴がせいぜいだが、同居の息子夫婦は、風呂好きのKさんにたっぷりとしたお湯に肩までゆっくりと浸からせてあげたいと考えていた。

Kさんの奥さんは早い時期に痴呆を発症し、現在は寝たきりで何ヶ月かおきに病院を転々としている。入院中とはいえ、しょっちゅう病院から呼び出される。息子夫婦の介護歴は長い。二人分の介護は限界に来ていた。息子の妻Mさんは体調を崩し入院を勧められていたが、Kさんの面倒を見るために入院できないでいた。Mさんが治療に専念する時間を確保するため、まずはKさんにデイサービスの入浴で気分良くしてもらい、続けてショートステイの利用に結びつけるという安易で勝手な計画を立てた。

「Kさん、湯さ入りに行こう」昔からの大地主で家長であるKさんは軽度の痴呆はあるものの頑固で騙しが利かない。「家の者がいるのに」よそ様の世話になるのは申し訳ないと直ちに断られた。計画は失敗した。

施設利用をあきらめ、ヘルパーや入浴車の導入を提案してみたが、それも叶わなかった。引きこもりの孫が知らない人の訪問を嫌い精神的に不安定な状態になるというのだ。祖父母の世話に忙しくあまり構ってやれなかったことが引きこもりの原因かもと、Mさんは自分を責める。
なんとか、自分たちだけで頑張ってみますと外部サービスの利用は見送りになってしまった。

結局、何も変わらなかった。介護の負担を家族だけじゃなく社会全体で背負おうというのが介護保険。せっかくの制度だもの、乗り換えを上手に先導するのもケアマネの仕事のひとつなのだ。Kさんや家族が納得できるような方法でアプローチできなかった、自分の技量のなさが、とても口惜しかった。
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