《No.23》
統合失調症


平成16年4月号


《MEMO》

今回は、ちょっと寄り道。
「精神分裂病」という昔の暗〜いイメージは徐々に払拭されつつある。
最近の患者さんは、自分自身の病気の理解が進んでいて、「私、統合失調症なんです」と堂々と病名を名乗ったりするので、面食らうこともある。
勉強しないとついていけな〜いと感じる瞬間でもある。
「統合失調症」とは、妄想、幻覚、幻聴などの症状が現れたり、感情が不安定になる心の病気で、ちょっと以前は精神分裂病と呼ばれていた。私が持っている古いテキストには、精神分裂病が、悲惨な表現で解説されていて読むだけで落ち込む感じ。精神活動が分裂するという強烈な言葉の響きとはうらはらに、今は原因が明らかにされつつあり治療法も進んだので、よりふさわしい病名に変わったのだ。

身体の病気と違って心の病気は、家族も周囲も、本人のつらい気持ちをなかなか理解できず混乱してしまう。下手な対応をして症状を悪化させてしまわないかハラハラドキドキ、つい身構えてしまう。何にせよ、他人の痛みはなかなか想像つかないものだ。

統合失調症を疑似体験する「バーチャル・ハルシネーション」という装置が世の中に存在する。ヤンセンファーマという製薬会社が病気への偏見をなくし、患者さんの苦しみに対する周囲の理解を深めることを目的として開発したものだ。国内に25台しかないというこの装置、ついに山形に来た。医療関係者や家族会からの引き合いが多いらしく、申し込みをしてすぐ借りられることになったのはラッキー。およそ20名がエイブル薬局に集まり、パソコンにつないだ眼鏡型ディスプレーとイヤホンを使い、幻覚や幻聴を体験した。所要時間は4〜5分ほど。病気の世界に迷い込んで戻ってこられなくなったらどうしようと心配したけど、大丈夫だったみたい。

さて、統合失調症になったら、世界はどのように見えるのか。何気ない普通の会話に重なって、幻聴や自分を非難する声が聞こえ、視界がゆがむ。不気味な世界。ささやきではなく、はっきりした声で悪口を言われるので愉快な気分ではいられない。日本版のほかに幻覚症状が多い米国版も体験させてもらった。実体験に基づいて作られているというが、奇妙で現実離れしたゲームの中にいるみたい。ホラー映画とも違う。
統合失調症の患者さんは不安を抱えていたり、過労、不眠の状態にあるので幻聴に過敏に反応してしまうのだろう。自分に攻撃的な妄想に24時間さらされたら、参っちゃうなあ。

ケアマネとは関係ないのではと思われるかもしれない。しかし、日本人の百人に一人が統合失調症にかかるとされている。けっして少なくない数字だ。
介護が必要な人が統合失調症であったり、家族が精神疾患を抱えていたりということは、よくある。ケアマネの意見交換では後者が困難ケースとして上がってくる。症状が激しい時期には正しい意志決定ができず家族介護が望めないばかりか、虐待予防の監視が必要であったりする。緊急訪問を含め、担当すると正直きつい。

病気を理解しなければならない。適切な治療と周囲の理解があれば、多くは社会生活が可能といわれているのだから。
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