《No.6》
商品知識あれこれ


平成14年11月号

《MEMO》

スーパーの一件。たまたま山形に遊びに来ていた実家の母と二人で、この光景に出会った。実は、私が近寄るより遙かに素早く、母は駆けだしていた。「どうかしましたか?」
お節介やきは、遺伝するものなのねー。
先日のこと、あるスーパーの駐車場で車いすを囲んで数人の大人が何かやっている。人を抱きかかえている様子だ。(何だ?どうしたんだ。誰か倒れたか?) 近づいてみると、輪の中心にはお年寄りがいて、ちょうど「どっこらしょ」と座らせてもらうところだった。(あらあら、何て無茶な姿勢で‥‥)

「何かお手伝いしましょうか」と申し出たところ、輪の中のご婦人が「いいえ。この中に専門家がいますから」と連れの男性に目配せした。男性はニッコリ微笑んだ。(へっ?専門家?)
「ばあちゃん、よかったなあ。これでゆったり座れるなあ。」そう声を掛けられた車いすのお年寄りも目を細めて喜んでいる。
「新しい車いすを買ったところなんですよ」とご婦人が続けた。みんなニコニコしていた。
「そうですか、では‥‥」私は引き下がった。

頭の中で「専門家」という言葉がグルグル回っていた。明らかに、車いすは身体に合っていなかった。そのお年寄りにどれだけ腕力が残っているのか定かではないが、自走式の車輪の大きいタイプでは取り扱いも大変だろう。そもそも、介護保険を使えば車いすなんて安く借りられる。要らなくなったら返せばいいし、新製品との交換も簡単だ。今どき購入だなんて。(でも、みんなニコニコしていた。)

ムカムカーッと、腹が立ってきた。「そうだ。売った店員が悪い。売ればいいってもんじゃないんだゾ。商品知識はあるのか?」プンプン怒りながら、我が胸に手を当てる。‥‥ああ、私は自分の扱う商品、介護サービスを熟知していただろうか。本当に分かった上で利用者に勧めていただろうか?

食事の支度が大変だから、ヘルパーさんね。生きがいづくりと呆け防止には、デイサービスかデイケアだわ。お風呂も広いしね。立ち上がりが不自由ならベッドのレンタルもありますよ。ご希望の事業所はありますか?無ければご自宅から一番近いところでいかがでしょうか。ケアマネになりたての頃は、確かこんな感じだった。穴があったら入りたい‥‥。

Mさんは一人暮らし。家の掃除や買い物を手伝ってもらえば、あとは自分で何とかできるということだった。引き受けてくれるヘルパー事業所がなかなか見つからなかったので、手っ取り早く新興の事業所に家事援助のヘルパー派遣を依頼した。久々に訪れたMさん宅の玄関先で若いヘルパーが庭掃除をしていた。家の中はあまり片付いていない。
(あれ?庭掃除だけ?)当の本人は、ひとりで風呂掃除を頑張った挙げ句、風邪気味とのこと。若いヘルパーに遠慮して、ろくろく仕事を頼まなかったらしい。ヘルパーを変えようと話しても「いいから、いいから。一度、頼んだのだから」と取り合ってくれなかった。

青白い顔で時々ふうっと息を整えながら話すMさんのことを思い出すたび、申し訳ない気持ちでいっぱいになるのだ。
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