《No.5》
バラバラ事件


平成16年10月号



《MEMO》

おお?薬剤師の情報公開から路線がどんどん外れていくぞ。
ま、いいか。
百円ショップを久々に覗いてその品数、種類の多さに圧倒された。お目当ての品物をカゴに入れ、店内をぶらつく。あれもある、これもある、何でもある。そして、ついに遭遇。
「ああ、こんなものまで‥‥」
くすり箱やら、ピルケースが大小、山と積まれているコーナーを発見してしまった。
「これが、百円なのかぁ」

複雑な思いが駆けめぐる。お盆に帰省したとき、実家のテーブルの上に何気なく置かれたピルケースを見て、私は仰天した。ケースには、大量の薬が入っていた。しかも、薬の形状に沿って包装シートをギリギリまでハサミで切り取ってある。シートが剥がれ中身が飛び出しそうなものも混じっていた。

「こ、これは、何?」
「ああ、こうしておくと持ち運びに便利だし、安心でしょう」
こともなげに答える母。そうか、こういうケースにいれて、オシャレに持ち歩こうとするとバラバラに切るしかないのか。

ついうっかり薬を包装シートごと飲み込んで、それが食道に刺さって穴を開けるという事故が、全国各地で毎年数例ずつ発生している。事故防止のため、製薬メーカー各社が、包装シートを一錠ずつ切り離せないよう改良を加えたのは十年も前の話だ。しかし、誤飲事故は一向になくならない。
人は何故、薬をバラバラにするのだろうか?

あのシートにだって湿気を防ぐとか、光を遮るとか、薬を保存する上での様々な工夫が凝らしてある。できたら、お渡ししたその形のままで、プッチンと中身を取り出して飲んでいただきたいと切に願うのだが。

「どうしても数が合わない」
持参した薬は見事にバラバラ、飲み忘れや飲み間違えで収拾つかなくなっている。実は、こうしたバラバラ志向は多い。

以前ケアマネで担当していたTさんはバラバラ発展系かも。Tさんは毎月いくつかの病院に通院していた。もらってくる薬の内容はずっと変わらなかった。帰宅後、一ヶ月分の薬を直ちにバラバラにする。そうして自作のマシーンで、朝昼夕と薬をオブラートに包むのだ。菓子箱と割りばしを材料に作られたマシーンは、オブラートが皿状にセットでき、作業しやすい高さになっている。まず、こな薬をオブラートにまく、その上に錠剤やカプセルを載せる。Tさんは目が悪いので時には一つ二つ薬がポロリとこぼれる。でも、気にしない。オブラートをクルッと丸め、仕上げに指先につばをちょこっと付けパックする。器用に次々と。

一ヶ月分の薬の保管状況としては、いただけない。衛生的にも大いに問題がある。落として飲まない薬もある。私は何も言えなかった。
これが、何年も続けてきたTさんの「仕事」だったから。それを取りあげることはできなかった。
あれれ、薬剤師もダメダメじゃあ、マズイじゃん。
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