《No.6》
不親切の言い訳


平成16年11月号



《MEMO》

もし免許を取り消されて、もう一度国家試験受けろって言われても、二度と受からないと思う。
もう、気力体力続きませんってば。‥‥とほほ。
エイブル薬局は、診療所に隣接した、いわゆる調剤専門薬局である。一般用医薬品は、ほとんど置いていない。テレビCMで流れる有名商品とか、健康食品とか、ある程度取り揃えておいた方が良いのかしらと迷うことはあるが、敢えて並べる勇気がなかなか出ない。弱小薬局の分際では扱う量もたかが知れている。仕入れも安くはない。同じものが大手ドラッグストアで安価に売られることは分かっている。外箱がしょっぱく変色する様子を見守るのも何だかなあと思ってしまうのだ。

電話が鳴る。
「おう。この前、痛み止めの坐薬もらってったんだけど、また痛くなってよぉ、あの○○って薬、売ってくれないか」
「ええっと、あの、その、前回の薬は、医師の指示がないとお譲りできないものでして‥‥」
「薬屋だろう。何で売れないんだよ。ケチケチ言ってないで、融通利かせられないのか」
「そう言われましても‥‥」
受話器の向こうの、明らかに不機嫌そうな様子に、しどろもどろになってしまう。実は、こういった問い合わせは、しょっちゅうあって、その都度対応に苦慮するのだ。

時間がないとか、診察を受けるのが面倒臭いとか、いつもと同じ薬だからとか、理由は様々。指名されるのは、医療用医薬品がほとんどである。処方箋なしで買える一般薬に比べて効き目が鋭く、薬事法で『医師の指示が必要』と規制されているものが多い。医師の指示なく勝手に販売すれば、法律違反で薬剤師免許取り消しもあり得る。よっぽど悪質な場合かなとは思うけど、見つからなきゃイイってもんじゃない。取り消しは困る。
仮に規制外の商品を指名されたとしても、やっぱり躊躇してしまう。安易に販売することで、定期受診の機会を減らして、病気の早期発見のチャンスを奪ってしまわないかと心配になる。薬剤師は、薬の正しい使い方を知らせたり、品質とか、相互の飲み合わせや副作用の回避、安全性を高めることに責任は持つけれど、医師の診療行為を妨げる事態はどうしても避けたい。だから、謝りまくる。

「ごめんなさい。ダメなんです。本当にごめんなさい」
保険は効かないので、全額自己負担になるということに触れると大体はあっさり引き下がってくれる。国民皆保険。三割負担という恩恵は計り知れない。ホッと胸を撫で下ろす。

毒にも薬にもなる「クスリ」。有効性と危険性の正しい情報が伴って初めて商品といえる。規制緩和によって、コンビニでも薬が買えるようになった。販売される品目は、安全上特に問題がないものに限定された。セルフケアの選択肢が増えるのは良いことだと思うが、本当にこれが消費者の望んだことなのだろうか。自分自身、一般薬を熱心に売ってはいないくせに、情報の伝え方がまずかったんじゃないか、努力が足りなかったのかしらなどと残念に思っている。
前へ 次へ 目次へ戻る TOPへ戻る